ef - a fairy tale of the two.

　2004年『はるのあしおと』で、その斬新かつ映画的手法を取り入れた演出と丁寧で叙情的なストーリーテリングから高い評価を得たminoriのインタラクティブ・ノベル。そして、その技術を洗練し、より高次の表現を目指した最新作が、本作品『ef - a fairy tale of the two.』です。

　これまでよりも更に独創的な物語。情景を余す所無く描き出す、繊細な演出表現とグラフィック。それぞれの「景色」を「感情」まで高める楽曲と動画。それら総ての要素がひとつの焦点を結び、作品という“世界”を創り上げてゆく ―― その躍動感とうねり、そして“はじまりの緊張感”を纏ったドラマティックなストーリーを、本作『ef』は描きます。

　インタラクティブ・ノベルという表現の、いわば一つの到達点として。そしてminoriブランドのマスターピースたる作品として。

　『ef - a fairy tale of the two.』という物語を描くため、私達が選択したもの。それは“群像劇”の表現手法です。
　minoriの処女作である『BITTERSWEET FOOLS』でも用いたこのスタイルは、プレイヤーを主人公と位置付ける形式ではなく、誤解を恐れず言うなら、プレイしていただく方に映画の観客、若しくは小説の読者に近い視点で物語世界を感じて頂くものです。

　『ef』は主に四つの章から成り、そこに序章・終章を併せた全六章で紡がれる物語。それぞれのストーリーは、互いに共通の登場人物/共通の時間を含みながら、各々別の視点を通し、震災から復興した街を舞台に流れて行きます。そしてそれら小さな流れは、次第に重なり合い、深く、力強く進む“ef”という奔流を形作ってゆく――。この物語が持つ、その「うねり」をより濃密に描く為、本作では群像劇という表現を選んだのです。

　この作品で描かれる各章には、それぞれに（いわゆる）主人公やヒロイン、そしてその周囲の人物たちが登場します。その中で、例えば第一章で中心にいた人物が、二章のキャラクターの視点では異なる感触をもって描かれる。同様に、同じ事象を思い出すにしても、彼らそれぞれに別の「真実」が存在するのです。それら様々な「作品世界」を体験する事で刻まれる『ef』というストーリーは、触れ方によりその流れを変え、いくつもの「物語」として満ちてゆくものとなっております。

　『BITTERSWEET FOOLS』で“物語”を描く事を、『Wind -a breath of heart-』で“情景”を焼き付ける事を、そして『はるのあしおと』では演出の深化により“心”を込めることを、私達はインタラクティブ・ノベルという表現の上に立ち、追求して参りました。

　そして今、本作『ef - a fairy tale of the two.』で、これまで取り入れてきた総てを凝縮した結晶を、お届けできる事となりました。
　minoriの新しいスタンダードを、存分にお楽しみください。

　全六章で構成される本作は、大きく分けて二つのエピソードからなっております。

　学生であり漫画家でもある青年・広野紘と、偶然のきっかけから彼と出会う女の子・宮村みやこ。そして紘の幼馴染・景と、紘の悪友・京介。彼らが交わる中で生まれる「成長」の物語を描いて行く中で“ef”という物語のテーマを定義する第一部。

　続いて景の双子の妹・千尋、人付き合いの苦手な青年・蓮治、プロのヴァイオリニスト・久瀬達の触れ合いを中心に、全エピソードに関わるミズキ、火村、優子らを交え、総ての物語が一つに収束してゆく様を描く第二部。

　これら二つのエピソードは、併せて『ef - a fairy tale of the two.』というひとつの大きな物語を形作るものではありますが、それぞれに独立/完成した作品となっております。　その群像劇としての特質と、作品自体のボリュームを鑑み、本作は映画等でよくみられる、エピソード毎のリリース形式を採らせて頂くこととなりました。

　所謂“前編”にあたる第一部を『ef - the first tale.（エフザファーストテイル）』、そして“後編”にあたる第二部を『ef - the latter tale.（エフザラターテイル）』とし、『ef - the first tale.』は2006年12月22日に、『ef - the latter tale.』は2008年5月30日にそれぞれリリースいたしました。

　それぞれのリリースに単体作品としての完成度を追求することで、一部・二部を通して紐解いて頂いた際に『ef - a fairy tale of the two.』全体で、より密度の高い世界を描き出した本作。単純な“二部構成”に終わらないクオリティと完成度を、体験していただけることでしょう。